2025年12月9日、第4回目となる現役ドラフトが開催されました。
出場機会に恵まれない選手の移籍を活性化させるこの制度では、今回も12球団で計12名の選手が移籍することになりました。楽天へ移籍した佐藤直樹選手や、ロッテへ移籍した井上広大選手など、ドラフト上位経験者もリストに含まれており、新天地での活躍が期待されます。
ここでは、2025年の最新結果とともに、現役ドラフトの仕組みやルール、過去に移籍してブレイクした成功例についてまとめました。
2025年(第4回)現役ドラフトの結果一覧
2025年12月9日に行われた現役ドラフトでの、12球団の指名選手(獲得選手)と放出選手は以下の通りです。今回は全12球団が1巡目の指名のみを行い、2巡目の指名はありませんでした。
セ・リーグ
| 球団 | 獲得選手 | 守備 | 旧所属 | 放出選手 |
|---|---|---|---|---|
| 巨人 | 松浦 慶斗 | 投手 | 日本ハム | 菊地 大稀 |
| ヤクルト | 大道 温貴 | 投手 | 広島 | 濱田 太貴 |
| DeNA | 濱 将乃介 | 外野手 | 中日 | 知野 直人 |
| 中日 | 知野 直人 | 内野手 | DeNA | 濱 将乃介 |
| 阪神 | 濱田 太貴 | 外野手 | ヤクルト | 井上 広大 |
| 広島 | 辰見 鴻之介 | 内野手 | 楽天 | 大道 温貴 |
パ・リーグ
| 球団 | 獲得選手 | 守備 | 旧所属 | 放出選手 |
|---|---|---|---|---|
| 日本ハム | 菊地 大稀 | 投手 | 巨人 | 松浦 慶斗 |
| 楽天 | 佐藤 直樹 | 外野手 | ソフトバンク | 辰見 鴻之介 |
| 西武 | 茶野 篤政 | 外野手 | オリックス | 平沼 翔太 |
| ロッテ | 井上 広大 | 外野手 | 阪神 | 中村 稔弥 |
| オリックス | 平沼 翔太 | 内野手 | 西武 | 茶野 篤政 |
| ソフトバンク | 中村 稔弥 | 投手 | ロッテ | 佐藤 直樹 |
今回のポイント
今回のドラフトでは、かつてのドラフト1位指名選手である佐藤直樹選手(2019年ソフトバンク1位)や、ドラフト2位の井上広大選手(2019年阪神2位)が対象となり、移籍が決まりました。井上選手は2024年にウエスタン・リーグで打率.308をマークして首位打者に輝くなど、ポテンシャルの高さを見せていた選手です。
また、巨人と日本ハムの間では松浦慶斗投手と菊地大稀投手、オリックスと西武の間では平沼翔太選手と茶野篤政選手、中日とDeNAの間では知野直人選手と濱将乃介選手と、3組の実質的な「交換トレード」のような形が発生しました。
なお、2025年から2巡目指名に関するルール変更(後述)がありましたが、結果として2巡目の指名を行った球団はありませんでした。

ホークスファンとしては、佐藤直樹選手の放出は複雑な気持ち…。ドラフト1位で俊足強肩の外野手として期待していたんだけど、外野の層が厚すぎて出場機会が限られていたからね。楽天で思いっきり活躍してほしい!(交流戦以外で・笑)
現役ドラフトとは? 仕組みとルール
現役ドラフトは、いわゆる「飼い殺し」状態になっている選手の救済と、球団間の戦力均衡を目的として2022年から導入された制度です。正式名称は「現役ドラフト会議」と呼ばれます。
メジャーリーグの「ルール・ファイブ・ドラフト」を参考に、日本プロ野球選手会が導入を要望し、実現しました。
対象となる選手
各球団は、以下の条件を除く保有選手の中から2名以上を「対象選手リスト」として提出します。
- 外国人選手
- 複数年契約選手
- 来季年俸5000万円以上の選手(ただし1名に限り5000万円以上1億円未満の選手を含めることが可能)
- 過去にFA権を行使した選手、またはFA資格を持つ選手
- 育成選手
- 前年のシーズン終了後にトレード等で獲得した選手
このリストは他球団には開示されますが、一般には非公開で行われます。
指名の流れ(わらしべ長者方式)
現役ドラフトの指名順は、通常のドラフト会議(ウェーバー制や入札抽選)とは異なる特殊な方式で決まります。
- 予備指名: 各球団がリストの中から「獲得したい選手」を1名指名(投票)します。
- 指名順の決定: 最も多くの票を集めた選手を出している球団が、1番目の指名権を得ます。
- 指名の連鎖:
- 1番目の球団が選手を指名します。
- 次に指名できるのは、「指名された選手が所属していた球団」です。
- これを繰り返し、全12球団が1名ずつ指名していきます。
必ず「1人放出して1人獲得する」形になるため、トレードに近い性質を持ちます。つまり、他球団が欲しがるような魅力的な選手をリストに出した球団ほど、早い順番で好きな選手を指名できるという仕組みです。
2025年からのルール変更点
2025年の開催から、2巡目の指名に関するルールが一部変更されました。これまでは2巡目の参加意思が曖昧でしたが、今回からは以下の3つの区分を明確にすることになりました。
- 参加(指名意思あり): 獲得したい選手が残っている場合。
- 参加(指名意思なし): 獲得はしないが、自球団の選手を他球団に出したい場合。
- 不参加: これ以上関与しない。
これにより、「選手を放出したいだけの球団」と「獲得したい球団」のマッチングがしやすくなりました。しかし、今回の第4回開催では2巡目指名は行われませんでした。
過去の成功例と主な指名選手
現役ドラフトで移籍し、新天地で主力として活躍した選手は少なくありません。ここでは過去の主な成功例を紹介します。
2025年シーズンに活躍(第3回で移籍した選手)
2024年12月のドラフトで移籍し、2025年シーズンに結果を残した選手たちです。
田中 瑛斗(日本ハム → 巨人)
移籍1年目でリリーフとして開花。62試合に登板し、1勝3敗36ホールド、防御率2.13という好成績を残し、ブルペンを支えました。阿部監督からシュートの質を評価され、対右打者に強い「火消し役」として欠かせない存在に成長。CSでは悔しい結果に終わりましたが、飛躍のシーズンとなりました。
鈴木 健矢(日本ハム → 広島)
アンダースローの特性を活かし、広島でロングリリーフを中心に24試合に登板。2勝0敗、防御率1.89と安定した投球を見せました。新井監督からは「渡辺俊介に似ている」と評価され、貴重な存在感を示しました。
2024年シーズンに活躍(第2回で移籍した選手)
水谷 瞬(ソフトバンク → 日本ハム)
現役ドラフトの代表的な成功例といえばこの選手。ソフトバンク時代は一軍出場ゼロでしたが、移籍後すぐに頭角を現し、交流戦では打率.438(交流戦史上最高記録)でMVPを獲得。オールスターゲームにもプラスワン投票で初出場するなど、大ブレイクを果たしました。レギュラーシーズンでは97試合に出場し、打率.287、9本塁打を記録。

ホークスファンとしては、水谷選手の活躍は正直複雑…。でも、出場機会がなかった選手がこうして輝けるのは、現役ドラフトの意義そのものだよね。
2023年シーズンに活躍(第1回で移籍した選手)
細川 成也(DeNA → 中日)
移籍1年目からクリーンナップに定着し、24本塁打を記録。その後もチームの主砲として活躍を続けており、現役ドラフト最大の成功例の一人です。
大竹 耕太郎(ソフトバンク → 阪神)
移籍1年目に12勝を挙げ、阪神のリーグ優勝・日本一に大きく貢献しました。先発ローテーションの柱として、「アレ」達成の立役者となりました。
大竹投手も元ホークス…。でも、阪神での活躍は本当に素晴らしかった。うちの妻(阪神ファン)も大喜びだったし、選手が輝ける場所で活躍するのは良いことだよね(涙目)
現役ドラフトの課題と今後
制度が定着してきた一方で、いくつかの課題も指摘されています。
移籍後の戦力外問題
第1回(2022年)で移籍した12名のうち、6名が移籍後1年で戦力外通告を受けました。「出場機会を与える」という制度の趣旨が、必ずしも実現できていないケースもあります。
ただし、野球評論家の野口寿浩氏は「移籍しなくても同じ結果だったと思う。12球団で成功した選手がいただけでも意義はある」と評価しています。
2巡目が機能していない
今回のルール変更にもかかわらず、4回連続で2巡目指名は実施されませんでした。より多くの選手に移籍の機会を与えるためには、さらなる制度の改善が必要かもしれません。
まとめ
2025年の第4回現役ドラフトでは、佐藤直樹選手や井上広大選手など、実績やポテンシャルのある選手たちが移籍しました。過去の例を見ても、大竹耕太郎選手や水谷瞬選手のように、環境が変わることで才能が開花するケースは珍しくありません。
現役ドラフトは、出場機会に恵まれない選手にとって「セカンドチャンス」を与える貴重な制度です。 一方で、移籍後の活躍は選手自身の努力と、受け入れる球団の育成・起用方針にかかっています。
今回指名された12名の選手たちが、2026年のシーズンでどのような活躍を見せるのか、新しいユニフォームでのプレーが今から楽しみですね。
